New Horizon

ニュー・ホライズン

 ヨナ・ティーとエリック・グロンウォール。メロディック・ロック・フリークならばこの二人が H.E.A.T のメンバーとして数々の功績を残したことは良くご存じであろう。しかしエリックは突如 2020 年に H.E.A.T を脱退。同時にオリジナルシンガー、ケニー・レクレモがバンドに復帰を表明したことは記憶に新しい。バンドの成長に多大な貢献をしたエリックの脱退は会心作「H.E.A.T II」をリリースした直後だっただけにファンのショックは大きかった。更に翌年 2021年春にエリックは自身が急性リンパ性白血病で療養中であることを発表。アーティスト生命すら危ぶまれる状況であることはファンを更に困惑させた。しかし彼は根気よく治療を続け、同年秋には完治したことを公表。ファンを安堵させた。しばらくアーティスト活動は制限されるかと予想される中、突如ヨナと共にバンド NEW HORIZON を始動させることと、翌 2022 年初頭にデビュー・アルバムをリリースすることを発表。この黄金のタッグで再び楽曲が聞けることにファンは歓喜した。デビュー・アルバム「Gate Of The Gods」はヨナが大半の楽曲を製作し、大部分の楽器もヨナが担当。ゲストとして元 ECLIPSE 等のロバン・バック(Ds)、H.E.A.T のデイヴ・ダロン(G)、DYNAZTY のラヴ・マグヌッソン(G)、DRAGONFORCE のサム・トットマン(G)らが参加したアルバムであった。世間の大半の予想は H.E.A.T の延長上にあるメロディック・ロックかと思われたが、蓋を開けてみると大方の予想を裏切る強力なメロディック・パワー・メタル作品だったために、ここまで振り切れた作品を作ることもできるのかとファンを驚愕させたが、有無を言わせぬ完成度に大好評をもって受け止められた。しかしファンには更なるサプライズが待ち受けていた、デビュー・アルバムのリリースとほぼ同時にエリックの SKID ROW 加入が発表されたのである。かねてより影響を公言していたエリックの憧れのバンドに加入するという、その大出世は喜ばしいと同時に、始動したばかりの NEW HORIZON の活動の停滞を意味することとなった。そしてヨナはその結果を受け、新たなシンガーを探すことを決意。そして最終的に 2 代目として白羽の矢が立ったのが、現DYNAZTY、AMARANTHE のニルス・モリーンである。ヨナと同じスウェーデン人かつ両バンドで経験を積み、実力を認められた彼を選んだのはごく自然な流れであった。元々NEW HORIZON の初期の構想は複数のシンガーを迎えて制作する予定で、その中にニルスも含まれていたからである。ニルスを迎えて制作されて本セカンド・アルバムは前作の延長上にあるピュア・メロディック・パワー・メタル作品。普段からパワー・メタルの歌唱に慣れ親しんだニルスの歌唱は、まるで何十年もこのバンドで活動してきたかのような、水を得た魚のようなパワフルで伸びやかなヴォーカルを披露しており、パワー・メタル・ファンの願望を具現化した、正に待ち望まれた作品となっている。(2024年6月2日更新 - アルバム『コンクアラーズ』について)